家庭での純氷の作り方!Barで使う透明なアイスボールで高級感を与える

2018年8月14日ウイスキー

高級なBarで使われる透明なキューブアイスやアイスボール(ボールアイス)、あるいはその元となる大きなブロックアイスは家庭でも作ることができる。このページでは、純氷の具体的な作り方や原理を解説する

高級なバーでウイスキーのオンザロックやカクテルを飲んだりして、しっとりとした大人の時間を過ごす、 こういったことに憧れを抱く人も多いだろう。 ご多分に漏れず、私もその一人だ。

その空間に高級な雰囲気を与えている要素の1つに、クリスタルガラスのように透明な氷がある。高級感の源はきらめいたバーカウンターや陳列されたウイスキーボトル、バーテンダーの立ち居振る舞いだけではない。
質の高い氷を使えば、ただそれだけでウイスキーやカクテルに高級感を与えることができる。要素は主に次の2つがある。

透明度が高い

透明度が高い氷=不純物が少ない氷。見た目として美しい。溶けても酒の味を変えにくい。

溶けにくい

早く溶けない。溶けにくいことで酒を薄めない。適切な氷の温度は何度なのかについても下記で説明する。

水道水でも美味しい透明な純氷の作り方

純氷

カルキなどの不純物を含まず、純度の高い水(H2O)で出来た氷。不純物を含んだ氷よりも融解温度が高くて溶けにくく、透明度が高い。

1つ目の要素。透明度が高い氷を作るには、不純物が少ない純氷を作れば良い。ではどうやって作るのか。以下、箇条書きで原理を説明する。

  • 水は、冷やすと純粋な水から凍り始める。そして取り残された不純物を多く含んだ部分が最後に凍る。

  • 製氷機で作る氷は全方向から同時に凍り、不純物が真ん中に集まる。氷の一番真ん中が一番白く濁っているのはこのため。

  • 試しに自宅の冷蔵庫の製氷皿で氷を作り、半分凍ったところで取り出してみるといい。

  • その氷はとても純度が高く透明な氷のはず。そしてまだ凍っていない水は、普通の水道水よりも不純物の濃度が高い。飲んでみると分かるが明らかに不味い。

  • つまり、欲しい氷の量に対して1.5倍~2倍程度の多めの水を冷やし、凍った部分だけを使えば良い。

  • この製法なら、水道水でも美味しい氷を作ることができる。実際、ろ過装置を使っているとは言え業務用の透明の氷も同じ方法を使い、ただの水道水で作られている

  • この製法だと、より0℃に近い高い温度で水が凍る。つまり溶けにくい氷になることにも直結する。(不純物を含んだ氷は純度の高い氷よりも低い温度で凍ったり溶けたりする)

冬場の汚い池の水でも、表面に出来た氷が透明で綺麗なのも同じ原理。

「水に空気を含ませると白く濁りやすい」はウソ

よくこの手の話を紹介する人は、「透明な氷を作るには、容器に水を注ぐ時に泡立てないように空気が溶け込まないようにしてください!」と説明する。しかしこれはデマである。

まず第一のファクトとして、水は温度が低いほど飽和溶存酸素量が増える。つまり水が冷たいほど沢山の空気が溶け込む。温度が下がれば勝手に表面から空気が溶け込むので、凍らせる前にいくら空気を溶け込ませないように注意を払っても無駄。冷凍前に一度沸騰させるのも無駄。30℃の水に対して、0℃の水は約2倍もの酸素を取り込むことができる。
また、泡立てて入れたとしてもわずか数秒間であって、冷凍庫内で数時間放置した時に水面から取り込まれる空気量の方がはるかに多い。

第二に、業務用で工場でもおこなわれている方法には水槽に空気を絶えず送り続けるエアレーションという製氷方法がある。

エアレーション

アイス缶と呼ばれる容器に水を入れ、容器をマイナス10℃の不凍液に沈めて、中心部を空気で撹拌させながら外周部に形成された氷のみを取り出す製氷方法。中心部に残った不純物の多い水は廃棄する。

また、48時間ほどかけてゆっくり凍らせることで「結晶が大きな氷」を作るので、結晶同士の結合面が少なくなり、溶けにくい氷となる。

溶けにくい氷の作り方

前述の原理で、純度の高い氷は溶けにくい。しかし更に方法がある。結論から言うと、溶けにくい氷を作るには、結晶を大きくして、とにかく氷をより低い温度にする必要がある
溶けにくい氷を追究するうえで、ある論文を見かけた。

PDFデータ:氷の破壊靱性

一10℃以上の温度では結晶粒界の三重点に液体とLての水が存在することが確認されている

一10℃以上一2℃以下の温度範囲では条件しだいで結晶粒界に0.1A程度の薄い水の膜が存在するとすれば,これは当然破壊靱性に影響を及ぼすものと考えられる。

要するに、温度の高い氷は柔らかいし、分子レベルでは隙間に水が残っている。その目安はマイナス10℃ほどだ。

たとえば冷凍庫で凍ったばかりの氷の温度はまだ0℃に近い。そのため、これをオンザロックなどに使うととても溶けやすい。

0℃に近い氷は、潜熱(氷が水へと変わる時に必要なエネルギー)のみで水になってしまう。
一方、-20℃の氷は、潜熱を与えてもまだ氷として留まるだけエネルギーのキャパシティーがある。この初期の温度差が氷の解けにくさと直結している。

業務用の製氷機の氷は溶けやすい

業務用の製氷機で作った氷も溶けやすい。
業務用の製氷機は機械の上部で氷を作って下に貯めるのが一般的だが、業務用製氷機の貯氷庫は冷凍庫のように電力で冷却されておらず、作った氷を断熱された容器に貯めているに過ぎない。そのため、氷の温度は0℃に近く、飲み物に入れるとすぐに溶けてしまう。また、不純物が含まれていることも一因にある。
この氷を溶けにくくするには、生成された氷を冷凍庫へ移動させる必要がある

割れない氷の作り方

しかし、ここでジレンマが発生する。
冷たい氷は割れやすい。温度の低い氷は周囲との温度変化に弱く、水を掛けただけで内部と外部の収縮差によって割れてしまう。かと言って、氷の温度を高くすると溶けやすくなる。

例えば、冷凍室内で彫刻作業をおこなう氷の彫刻師は、温度が低すぎると作業中に氷が割れやすくなるため、室温がマイナス6℃前後、氷の温度がマイナス2℃程度になるように設定する。氷同士を接合するために水を使う場合でも-5℃までしか氷を冷やさない。
そして披露する時には、溶けにくくするためにマイナス14℃程度まで冷やしてから展示する。空気は熱伝導率が小さいので-14℃まで冷やしても割れにくい

しかし氷の彫刻とは違い、ウイスキーと氷は接触する。温度差が大きければ、たとえ気泡を含まない透明度の高い氷でも割れる確率が高い。そもそも気泡の多さと割れやすさは関係ない

氷が割れることを防ぎたいなら、ウイスキーも冷凍庫で冷やしておくのが最も無難な方法だろう。そうすれば氷の温度を極端に大きく下げる必要性もなくなるし、綺麗な球体にしたアイスボールが音を立てて割れることも防げる

アルコールが凍る温度

ウイスキーは何度で凍るの?という疑問を持つ人もいると思うので、アルコール度数と凍結温度の関係を表で紹介する。ちなみに酒に含まれるアルコールの成分はエタノールである。

エタノール度数と凍結温度
アルコール度数 凍結温度
0% 0.0℃
10%(ワイン:10~15度) -4.6℃
20%(日本酒:15度前後) -11.2℃
30%(焼酎:20~35度) -20.9℃
40%(ウイスキー、ブランデー) -30.7℃
50%(ジン、ウォッカ) -38.1℃
60% -45.4℃
70%(ウイスキーの原酒) -50.5℃
80% -67.0℃
90% -113.0℃
95%(ウォッカ スピリタス:96度) -120.0℃
100% -114.5℃

割れにくい氷を作る時の冷凍庫内の温度設定

前述の通り、庫内温度が-6℃の時に氷が-2℃になるということは、庫内と氷では約4~5℃の温度差がある。割れにくい氷の限界温度とされる-5℃までに温度低下を抑えたいなら、庫内温度は-9~-10℃以上が理想だろう。(マイナス8~マイナス7℃とかね)

家庭用の冷凍庫は-17℃~-20℃もあるので、発泡スチロールなどの断熱容器で隔離する必要があり、温度管理は少し難しい。しかしこの氷を使えば、たとえウイスキーを冷やしていなくても氷は割れにくい。ただし少し溶けやすい。

氷の種類と名前(ロックアイス、クラックドアイスなど)

ブロックアイス(Block Ice)

立方体の大きな氷。切り分けて使用する。板氷、角氷のこと。(ただし3~4 cm角程度のキューブアイスを角氷と呼ぶ場合もある)

スティックアイス(Stick Ice)

ブロックアイスを切り分けて、細長いグラスに丁度1本が収まる程度に成形した角棒状、角柱状の氷。

キューブアイス(Cube Ice)

スティックアイスを短く切り分けて、4 cm角程度の立方体にした氷。

アイスボール(Ice Ball)

真球状に成形した球い氷。丸氷。ランプ・オブ・アイスの一種。日本ではボールアイス(Ball Ice)と呼ぶ人もいるが、英語圏ではほぼ見られない表現。

ランプ・オブ・アイス(lump Of Ice)

氷塊。英語のLumpは「塊」や「ずんぐりした」を意味する。これは氷が複数寄り集まった場合にも表現される。
例えば、英語ではHail(霰)が複数集まって出来るHailstone(雹, 霰の石)と呼ばれる氷の塊はLumps of iceと表現される。オンザロックで使われているボコボコした大きな氷の塊や角ばった氷などはアイスボールではなくランプ・オブ・アイスと呼んだ方が適切。

ロックアイス

千葉県八千代市に本社を構える小久保製氷冷蔵が製造している「かち割り氷」の固有商品名。そのため、英語圏では「Rock Ice」と言っても通用しない。

かち割り氷; クラックドアイス(Cracked Ice)

ブロックアイスなどを砕いて作られる、イビツな形をした氷。日本ではクラックドアイスと呼ばれることもあるが、英語では普通、Cracked Iceというとひび割れた氷を意味し、日本でのクラックドアイスとは意味や捉え方が異なる。

クラッシュドアイス(Crushed Ice)

砕いた氷。日本では、かち割り氷やクラックドアイス(Cracked Ice)と呼ばれるサイズよりも更に小さくした氷を意味することが多いが、英語圏では日本のかち割り氷くらいのサイズを意味することもあり、定義の範囲が広い。

ブロックアイスの作り方

必要な道具
  • 二重構造になっている、または断熱材で覆われている容器
  • のこぎりとハンマー or アイスピック or 包丁
  • 水(水道水でも構わない)
  1. 容器に水を入れる。

  2. 容器に入れる水の量は、作りたい氷の量の1.5倍から2倍。

  3. 容器の上部を開放して冷凍庫に入れる。

  4. 水面からだけ水が凍る。

  5. 半分ほど凍ったところで冷凍庫から容器を取り出す。

  6. 容器をひっくり返して中身を取り出し、凍らなかった水と余計な氷のバリを取り除く。

冷凍するのが何時間かについては、作りたい氷の量、初期の水温、容器の断熱性能、冷凍庫の性能にもよるので言えない。ちなみに上の動画では約24時間冷凍することで、厚さ約10 cmのブロックアイス(角氷、板氷)を生成している。

スティックアイス、キューブアイスの作り方

  1. 上述した方法で作ったブロックアイスに、ノコギリを使って必要な大きさに切れ込みを入れ、ノコギリの峰をハンマーで叩いて氷を立方体になるように割る。この時点の方が温度が高いので割りやすい。

  2. 割った氷をファスナー付きの食品用プラスチック・バッグ(ジップロックなどのフリーザーバッグ)に入れる。

  3. 冷凍庫で更に冷やす。

  4. 使う時はフリーザーバッグ内でそれぞれがくっついているので、袋の外から叩いて外す。

アイスボール、ランプ・オブ・アイスの作り方

最も物体の表面積が小さくなる立体形状は真球(ボールの形)。まるい氷は飲み物や空気との接触を最小限に抑えることができるので氷が溶けにくく、飲み物を極端に冷やしすぎないというメリットがあり、ウイスキーのオンザロックなどでよく使われる。しかも見た目が美しい。

ブロックアイスをアイスピックで削って成形してもいいが、慣れていないと難しいし怪我をするおそれもあるので、アイスボールメーカー(球状のツール)を使う方がいい。

  1. サーモスなどの真空断熱されたタンブラーに上まで水を入れる。

  2. アイスボールを作る専用容器に水をいれ、容器をタンブラーの上部にはめ込む。

  3. 冷凍庫にいれ、上部のボール部分だけが凍ったところで取り出す。

専用のアイスボールメーカーが無い場合

  1. サーモスなどの真空断熱したタンブラーに上まで水道水を入れる。

  2. 冷凍庫で約16時間~20時間凍らせる。

  3. 半分ほど円柱状に凍った時点で冷凍庫から取り出す。

  4. タンブラーをひっくり返して底面からお湯を掛けて、氷を取り出す。(と言ってもタンブラーは断熱されていて、実際に温めたい箇所はタンブラーの縁や内部の金属部分。手で内側を触りながらお湯の熱を与える。するとタンブラーとの間に隙間ができるので、コップ側面に圧力を加えて氷と水の間に空気を入り込ませる。あとはひっくり返せば落ちてくる。)

  5. タンブラー内部に水をぶっかけて取ることもできるが、解けて減りやすいので私はやってない。お好きな方法でどうぞ。

  6. バリを取ったり氷をボール状に成形し、フリーザーバッグに入れて保管する。

真空断熱タンブラーの代わりに「カップ麺の容器で代用できないか?」とも考えたが、容器内部はお湯を入れずに未使用でもかなりニオイが残っていて使い物にならなかった。

真空断熱タンブラーで16時間冷凍した水道水

タンブラーの上から覗いただけでも、かなり透明度が高い氷だと分かる。

ひっくり返して取り出した状態

タンブラーの金属表面を伝って凍り始めるため、底面の外周部に不思議な氷の結晶が形成されていた。

氷のバリを取り除いた円柱状の氷
手で持つと、指紋が確認できるほど透明度が高いことが分かる
かち割りにしても美しい

5月の常温の水から16時間で厚さ6 cm~7 cmほどの氷を作ることができた。タンブラーの円周は8 cm以上はあるので、大きい丸い氷が作りたい場合は厚さ8 cm~9 cmまで氷を成長させたほうがいい。

ただし、底まですべて凍ると非常に取り出しにくくなるので注意した方がいい。初期の水温にもよるが、冷凍時間は長くても24時間程度になるはず。
もし凍らせすぎて簡単に取り出せなくなったら、表面の氷やタンブラーの外側など全体を水で濡らした後、タンブラーを逆さにしてボウルの中で2時間ほど放置すれば簡単に外せる。無理をして、上から水を掛け続けたりすると氷が溶けてなくなるのでしない方がいい。

アイスピックなどで成形する時の、方法別の難易度・メリット・デメリット

アイスピックなどでブロックアイスをアイスボールやランプ・オブ・アイス、クラックドアイス等に成形する方法は主に3つある。それぞれの難易度順にメリット・デメリットを紹介する。

ロングのシングル・アイスピックを使う

難易度

★★★★★

メリット
  • パフォーマンスとして華がある。

  • 上達すれば、包丁や3本刃アイスピックよりも綺麗で味わいのある表情の氷が成形できる。

  • これ1本で色んな種類の氷を作ることができて汎用性が高い。

デメリット
  • 慣れるまで難しい。

  • 包丁・ナイフとは違い、完全な平面は作れない。

包丁を使う

難易度

★★☆☆☆

メリット
  • 初心者にとって作業がしやすい。

  • アイスピックでは作れない綺麗な平面が作れる。

デメリット
  • パフォーマンスとして華がない。

  • 氷を手に持って作業する場合、深い切り傷を追う危険性がある。

  • 色んな方向に氷が飛び散りやすい。

まな板などの上に置いて作業すれば比較的安全。

3本刃アイスピックを使う

3本刃アイスピックは三俣アイスピックとも呼ばれる。

難易度

★☆☆☆☆

メリット
  • 最も簡単。

  • 最も安全。

デメリット
  • パフォーマンスとして華がない。

  • シングル・アイスピックよりも怪我をしやすい。

  • シングル・アイスピックほどは綺麗な仕上がりにできない。

  • 色んな形状の氷を作ることができない。汎用性が低い。

本格的なかち割り氷の作り方

前述した大きなアイスボールや柱状の氷が不要で、普通のキューブアイスサイズの氷だけでも構わないのなら、断熱性の無いステンレスなどの金属製バケツで作る方が製氷速度が早い。この製法なら、ブロックアイスを作るのに24時間かかるのに対して、12時間程度で製氷できる。出来た氷は比較的薄いため、かち割り氷として成形するのに適している。
ただしこの方法だと氷結する速度が早いため、表面からのみ凍らせるよりも氷に不純物が含まれやすくなる。また、結晶の方向性も揃いにくくなるので、割ったり削ったりする時に作業性が少し落ちるともいわれている。

塊を砕くにはアイスピックなどが必要だが、割れた氷(クラックドアイス)を更に小さくしたり角を取るなら大きめのスプーンの底で叩くと良い。

キューブ型製氷皿を使った「かち割りっぽい氷」の作り方

  1. 大きめのキューブアイスを製氷皿で作る。

  2. できた氷を水で洗い、角を落とす。水で洗うと小さくなるため、最初に大きいキューブアイスである必要がある。

  3. ザルでよく水気を切って、ジップロックに入れて再度冷やす。

この方法なら完璧とは言えないが気軽にかち割り風の異型の氷を作ることができる。この工程にはいくつかの意味・効果がある。

  • 角を落とすことで表面積を減らす。

  • 美味しくない溶けやすい部分を強制的に溶かして洗い流す。

  • ランダムな形状にすることで見た目を美しくする。

この氷を使えば、水割りやカクテルを作りたい時に、製氷皿で作ったキューブをそのままアイスペールに入れるよりかは幾分雰囲気が出せる。

業務用製氷機については下記リンクでもまとめているので、購入を検討されている方はよければ併せてご一読を。