ボジョレー・ヌーヴォーの熟成期間の限界は何年?グレードや製法の違い

2018年4月30日ワイン

ボジョレー・ヌーヴォーと言えば、新酒としてのフレッシュさを楽しむものなのかもしれない。しかし、熟成させることはできないとも限らない。ここでは熟成にも耐えられるボジョレーヌーヴォーを紹介したい。

低品質なワインは長期熟成できない

たとえばボジョレーヌーヴォーなどの新酒でとても安い価格のものを見かける。500円とか1000円とか。「これらを長期熟成すれば・・・美味しくなるのではないか」と考える人もいるだろう。でもそう簡単ではない。ボジョレーヌーヴォーの場合は特にそうだ。理由は主に2つある。

  • 生産者がそもそも熟成させることを前提に製造しておらず、醸造工程も本来とは異なる。

  • そもそも、ボジョレー・ヌーヴォーに使用されるブドウの品種「ガメイ種」そのものが長期熟成に向いた品種ではない。

ボジョレー・ヌーヴォーについて、以下で用語の定義と併せて解説する。

ボジョレーワイン(Vignoble du Beaujolais)

ブルゴーニュワインの一種。ボジョレーワインを名乗るのは、赤ワインではガメイ種(gamay)を使用したものに限定されている。白ワインではシャルドネ (chardonnay) 種を使用したものに限定されている。ボジョレーワインには赤ワインも白ワインもあるが、白ワインはボジョレーワイン全体の1%しかない。

ボジョレー・ヌーヴォー(Beaujolais Nouveau)

Nouveauは英語のnew, young, freshなどに相当する。ボジョレーワインのうち、MC法を用いて収穫後のブドウを数週間で醸造した新酒を意味する。

よく安価で売られているボジョレーヌーヴォーの大半は、ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーなどに分類されない広域ワイン(ボジョレーワインの中では審査基準が一番ゆるいワイン)としてのボジョレーワインである。

MC法(Macération Carbonique, マセラシオン・カルボニック=炭酸ガス浸漬法)

Macération は「解離、浸軟」を意味し、Carboniqueは「炭酸」を意味する。英語では語順が入れ替わり、Carbonic maceration(カーボニック・マセレイション)という。
収穫したワインを破砕・粉砕せずにステンレスタンクに入れ、密閉した状態で炭酸ガスを充填して加圧して醸造する。圧迫により短期間でも果皮の色素や香りを抽出することができる急速発酵技術を意味する。
酵母の自然発酵によるアルコール生成時に副産物として生成される炭酸ガスを利用した炭酸ガス浸漬法はマセラシオン・ナチュレル(macération naturel)と呼ぶ。

ボジョレー・ヴィラージュ(Beaujolais Villages)

ボジョレー・ヴィラージュは、46箇所の村(ソーヌ=エ=ロワール県の8ヶ村とローヌ県の38ヶ村の合計)が冠することのできるブランド名・ラベル名で、ぶどう収穫量やアルコール度数などについて広域ボジョレーよりも厳しい基準を設けている。ヴィラージュとは英語のヴィレッジ(village)と同じ、つまり村を意味する。

46ヶ村はAOCボージョレを構成する96ヶ村のうちの約半数にあたる。これはボジョレー・ヌーヴォーにも適用され、ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー(beaujolais villages nouveau)というブランド名を冠することができるのはこの46ヶ村だけである。

クリュ・デュ・ボジョレー(crus du Beaujolais)

フランス東部ブルゴーニュ地方の特定の地域で生産されているボジョレーワインのうち、特に優れたワインを生産している次の10地区に与えられたAOCの総称。

  • サン・タムール (St. Amour)
  • シェナ (Chenas)
  • ジュリエナ (Julienas)
  • シルーブル (Chiroubles)
  • ブルイィ (Brouilly)
  • コート・ド・ブルイィ (Cote de Brouilly)
  • フルーリー (Fleurie)
  • ムーラン・ア・ヴァン (Moulin a Vent)
  • モルゴン (Morgon)
  • レニエ (Regnie)

ボジョレーワインの条件であるガメイ種はそもそも長期熟成に向いていないとも言われるが、クリュ・デュ・ボジョレーの場合は高品質なので4~5年熟成させることができるポテンシャルを持っている。
ボジョレー・ヴィラージュにはヌーヴォーがあるが、クリュ・デュ・ボジョレーにはヌーヴォーはない。

AOC(Appellation d’Origine Contrôlée)

フランスの農業製品に付与される品質保証や認証。

つまり、ボジョレー・ヌーヴォーの中でもボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーならそれなりの品質が保証されているということになる。

解禁日が設けられている理由

ボジョレー・ヌーヴォーの販売は、各国の現地時間の11月第3木曜日の午前0時と定められている。

なぜならこうだ。
ブドウを収穫後に短期間で醸造したワインは、実際には11月第3木曜日よりも早く出荷することが一応可能だ。しかし、それを許してしまうと生産者は競い合って早く出荷しようとする。他の生産者を出し抜いてより早く出荷すれば買い手がそれに殺到し、売上が上がるからだ。しかしこれを許せば、ワインになる前の半分ブドウジュースのようなものまで出荷されかないし、ワインの品質やブランドに傷を付けかねない。そのため、解禁日を設けている。

どれくらい熟成可能なのか

品質や潜在能力があまり高いとは言えない一般的なボジョレー・ヌーヴォーの場合、賞味期限は1~3ヶ月、あるいはせいぜい6ヶ月が限界だと言われている。つまり、解禁された年の年内に飲むか、正月、頑張っても春先までには飲んだ方がいいということ。春になれば普通に醸造されたワインも出荷される。しかし、翌年の解禁日まで1年間熟成させる人もいる。そして実際それなりに熟成している。

現実的には1年から2年、良くても3年程度が限界だろう。ヌーヴォーではないクリュ・デュ・ボジョレーでさえ4~5年が限界だということから、高品質なボジョレー・ヌーヴォーでもこれを超えることは難しい。

例えば、ある年のヌーヴォーを3~4本買って、1本はその年に飲み、残りのボトルは1年毎に最新のヌーヴォーと飲み比べてみるという楽しみ方も面白いかもしれない。

熟成させたいボジョレー・ヌーヴォーの銘柄

ドメーヌ・デ・ニュグ ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー

ドメーヌ・デ・ニュグ(Domaine des Nugues)のボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー。

ボルドーの「シャトー」
ブルゴーニュの「ドメーヌ」

「シャトー」や「ドメーヌ」とは、ぶどう畑を所有し、栽培から瓶詰めまでをすべておこなう生産者を意味する。
たとえば、日本でも有名な赤ワイン「ロマネ・コンティ」を造っている会社の名前はDRC(Domaine de la Romanée-Conti, ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ)社。

シャトーなら、ボルドー五大シャトーなどがある。

ボルドー五大シャトー
  • シャトー・ラフィット・ロスシルド
  • シャトー・オー・ブリオン
  • シャトー・マルゴー
  • シャトー・ラトゥール
  • シャトー・ムートン・ロスシルド

ドメーヌ・デ・ニュグの当主のジャン・ミシェル・ジュラン(Jean Michel Gerin)は、ボージョレのワインは決して早飲みワインではありません。ボージョレを造るガメイという品種は、最高の熟成をするポテンシャルを持っているのです。丁寧に育てたぶどうで丹念に仕込んだ私の造るヌーヴォーは、熟成にも耐えうる、まさにヌーヴォーを超越した果実味と旨みを兼ね備えています。 是非、本物のボージョレ・ヌーヴォーを味わって下さいとしている。

つまり生産者が「熟成させた方が美味しい」と言っているワインだ。ちなみに彼はボジョレー地区トップ7に入る生産者とも言われている。

フィリップ・パカレ ボジョレー・ヴァン・ド・プリムール

ブルゴーニュに於いて、プリムールはヌーヴォーとほぼ同じ意味を持つ。

フィリップ・パカレ(Philippe Pacalet)氏はロマネコンティ社からの醸造長としてのスカウト・オファーを断ったほどの人物だが、彼はガメイ種についてエレガントで気品のある品種だと評している。そんな、理念を貫く彼が生産したプリムールをぜひ試してみて欲しい。